不漁対応に操業転換も:水産庁指摘

EDF企画 『どう向き合う、気候変動』― 4回シリーズ第2回

2021-06-10

利害の対立克服必要 

 気候変動で減る魚種を獲り控え、資源豊富な魚種へ漁獲対象を変える。このためには、獲り方の転換が重要。漁業種などによる利害の対立や、厳しい議論を乗り越える必要がある。

漁船数と収益性のバランスが問われる

 

水産庁が2021年6月4日に発表した「不漁問題に関する検討会」取りまとめには、次の旨が含まれる。特定の魚種だけに頼っている漁法は対象魚種が減った際に対応できないため、1つの漁船で複数の漁法や対象魚種を持つなどの漁業経営に転換が必要▽漁業許可や船の検査基準、トン数、機関出力に関する船舶職員の乗り組み基準など規制の見直しが必要―。 

 実際、2021年4月に大日本水産会と海洋水産システム協会の開いたシンポジウムでは、複数の漁法に使えるマルチパーパス(多目的)漁船が必要だと指摘する声が続出。また昨年12月施行の改正漁業法では、厳格な漁獲量規制を守るなどの条件を満たした漁船に、従来あった漁船サイズ規制を撤廃するとしており、1隻の船が多種の漁具や機器類を積むには追い風となる。 

 加えて機関士などの乗船義務も論点。近年は、ネット環境が整って船の機関の状況などを陸上からでも把握できるようになり、洋上での機関士の作業を軽減できる期待がある。内航船などで、機関士など海技士の乗船義務を緩める議論が行われており、漁船がより自由に遠い漁場に足を延ばせる可能性も出ている。 

まき網トロール兼用船の海外の事例

 さらに、行政が漁業者に漁法や漁場、魚種などを規制した上で漁業許可を与えるという制度のあり方も議題となる。近海でも魚の分布の変化や技術革新で新たな漁場の可能性が出てきており、過去の環境に合わせた規制が実態に合わなくなるケースもあるためだ。 

 現状、業界内からは「中国の大型漁船は、複数の漁法を柔軟に駆使して、多くの魚種を獲れるため経済効率が高い。日本でも漁船漁業の担い手の一部から『漁獲枠などの規則は守るが、なぜ漁業許可によって漁法や魚種まで縛り付けられないといけないのか』と声が出ている」との指摘も。一方で、新たな漁法・漁場を使う漁業者が現れれば、従来からその漁法・漁場を用いてきた漁業者から「競合するので参入しないでほしい」という声が出る。 

 柔軟に新たな操業形態への挑戦を認められるよう、知恵を絞ることが求められつつある。漁業種類ごとの実績を認めての権益の保護、漁業種間の利害調整の歴史など「既存の漁業関係者の立場」にいかに配慮しつつ「構造改革」を進めるか、バランスが重要だ。 

 資源の減少・不安定化や漁業者の高齢化などの中、従来の漁船すべてを維持することは不可能に近い。政策決定に影響力を持つ政府内外の識者らからは「漁船数をいかにスリム化し効率性を上げるか、困難な課題だが直視し将来像を築いていかなければならない。その中では沿岸の小規模漁業への一定の保護政策も求められよう。これらの困難な課題から目をそらし先延ばしていては温暖化への対応もできないし、真の国際競争力も得られない」という指摘がある。利害対立や激論は必至だが、行政や業界団体の調整が問われる。 

 天然魚が減った時に期待される養殖業でも、増産には餌・種苗の量など制約がある。特に、政府が増産を目指すとしているブリ養殖は、現状でも種苗を天然に依存しており、今年は種苗が不漁。養殖業界がより多く種苗を獲れば、天然物の資源が減る危険も高まる。天然に依存しない人工種苗の生産や、種苗を多く獲りたい養殖業界と天然物の漁獲を伸ばしたい漁獲漁業側との間でも利害調整が必要となりそうだ。 

 その他、同委の取りまとめた、漁場変化に合わせた定置網の設置場所の変更▽人工放流したサケの回帰率の低下の原因検証、回帰率の良い技術の開発、放流用種苗育成施設の養殖種苗生産への転用▽豊富にいる魚種、未利用資源を活用するための、漁業者と加工業者の話し合い―といった観点も、今後の具体策が求められる。 

EDF(環境保護基金)提供。本記事は、みなと新聞の許可を得て転載しています。 

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