気候変動下における水産業の未来

EDFワークショップ報告(2021年7月開催)

目次

  1. 開催概要
  2. ゴールとテーマ
  3. 講演プログラム

1. 開催概要

「気候変動下における水産業の未来(The Fate of Fisheries in a Climate Changed World)」は、EDFの海洋チームが企画・主催した2日間のオンライン・ワークショップです。このワークショップでは、米国と日本の専門家が集まり、気候変動が漁業や海洋生態系に与える影響について議論しました。より優れた科学と順応的管理によって気候変動に対する漁業の復元力(resilience/レジリエンス)を高めることに焦点を当て、科学的、社会的、経済的な観点から議論が行われました。

このワークショップは、米国東部時間2021年7月20日と21日の夜(日本時間7月21日と22日の朝)に開催されました。エンバイロメンタル・ディフェンス・ファンド(EDF)、米国海洋大気庁(NOAA)、国立研究開発法人 水産研究・教育機構(FRA)、水産庁(FAJ)の代表者など、米国と日本から80名近くの科学者や指導者が参加しました。

2. ゴールとテーマ

このワークショップを開催する最大の目的は、日米の科学者間の国際的な協力関係を促進することでした。気候変動が世界中の漁業の健全性と安定性に大きな影響を与えていること、また、気候変動の影響がより顕著になるにつれ、この課題はさらに激化するであろうことが認識されつつあります。一部の国では、漁業管理において気候変動に対する復元力を重視し始めていますが、気候変動の影響はまだ比較的新しく、進展途上の現象であるため、ほとんどの国では管理計画を策定する際に考慮していません。世界の漁業の健全な未来を確保するためには、気候変動に対する復元力を意識した漁業管理をより大きな規模で実施することが必要であることは明らかです。

また、このワークショップが、大きな排他的経済水域(EEZ)を持ち、漁業に大きな経済的依存をしている2つの主要な漁業国である米国と日本の間で開催されたのは、必然です。両国が管轄する海域の広大さと、熱帯から亜寒帯(米国は北極)までの縦断的な広がりを考えると、気候の影響は避けられず、場合によっては深刻なものとなるでしょう。このような影響を軽減するためには、来るべき変化をよりよく理解し、データギャップを特定し、協力していくことが重要になります。米国と日本の専門家は、他の国が同様の課題に直面したときに参考となるよう、この分野でリーダーシップを発揮する態勢を整えています。さらに、日本の国会議員は、先見の明ある改正漁業法を近年可決しました。この法律により、科学的根拠に基づく漁獲制限で管理される漁獲量の割合が増加し、資源評価の対象がすべての商業資源に拡大されることになります。したがって、日本の科学者が互いにコミュニケーションをとり、米国の組織と協力して、この改正法が気候変動に強い方法で完全に実施されるようにすることが特に重要なのです。

本ワークショップの目的は、1)太平洋の漁業が直面している気候変動に関連した課題について共通の理解を深めること、2)日米の科学者間で知識の共有と対話を促進することによって、より高度で明確な理解と協力関係を構築することです。

本ワークショップでは、このような幅広い目的のもと、次のことについて議論を促進させました。1)漁業を変化に対応させるためのより効果的な気候予測法の開発、2)よりよい管理を実現させる上で鍵となるデータギャップの特定と解消、3)国際的な協力が価値を生み得る実践分野の特定(例:米国と日本のデータをプールして大規模なモデリングを行い、それを各国が現地の情報と合わせて活用する)、4)将来のパートナーシップに向けた、両国の科学者の間の新たなつながり作りと既存の関係の深化。これらのねらいを念頭に置いて、ワークショップは参加者間の交流を最大化するように設計され、各日とも講演者による講演の後に質問の機会が設けられ、最後に長い質疑応答とディスカッションの時間を設けました。 

3. 講演プログラム

1日目:

開会挨拶

講演

意見交換

  • 宮原正典(元 国立研究開発法人 水産研究・教育機構理事長)
    - 宮原氏の進行によるディスカッション

2日目:

冒頭挨拶

  • ジョン・ミミカキス(EDF アジア太平洋地域海洋担当ヴァイス・プレジデント)
    - 1 日目の内容を紹介

講演

閉会挨拶

  • 中山一郎 (国立研究開発法人 水産研究・教育機構 理事長)