科学への納得対話でつかむ 「管理の効果」漁業者に分かりやすく

EDF企画 『日本の資源管理最前線』― 8回シリーズ第4回

2020-02-20

【不安4. 科学は”説得力“を持てるのか】

 漁業管理の成功例を見ると、科学者の助言を生かすものが多かった。だが、漁業者が「科学者の言う管理で本当に魚と漁獲は増えるか」と不安に思うことも多い。とはいえ「実行するのは漁業者。科学を押し付けてはいけない」(沖縄県水産海洋技術センター秋田雄一研究員)。漁業者が科学に納得し、管理に協力心を持てることが大切だ。納得感づくりへ、どんな工夫ができるだろうか。 

市場から信頼構築 

 沖縄県北部で資源管理後に増えたマクブ(シロクラベラ)は高級魚だが、小さいと魚価が安く産卵もできない。「20~30年前から、県の科学者は漁業者に小さな個体を獲らぬよう助言していた」(同)。漁業者は当初、科学者を歓迎しなかったが受け入れていったという。 

 沖縄市で資源管理を進める漁業者・柳田一平氏は、行政や科学者の提案が受け入れられてきた理由について「忍耐強く、分かりやすい言葉で管理の効果が示され続けたため。小型魚を守り、大型魚にするとどれだけ魚価が上がるかも示してくれた」と語る。 

 秋田研究員は、科学者が漁業関係者に信頼されるため「市場に出てコミュニケーションすることを大切にしてきた。先輩方の時代には漁業者に魚を触らせてもらえないこともあったと聞くが、意思疎通するうちにデータや知識をもらったり、意見交換したりできるようになっている」と証言する。 

 同県は大きな魚と小さな魚の割合を見て「子どもの魚を獲り過ぎていないか」と調べたり、単なる漁獲量だけでなく漁獲努力量(例・漁に出た回数など)を調べて「漁獲が減ったが、出漁と魚自体どちらが減ったせいか」などと分析したり、漁業者に意見を募って「魚の保護区をどこに置くと効果が出るか」などを一緒に考えたりする。 

 同県では、行政の予算で漁業者の船をチャーターして一緒に調査をすることも。調査でデータがそろい、「漁師自身、科学者と一緒に動くことで資源への知識や意識が高まる」(柳田氏)。 

沖縄県の科学者はマクブを大きくしてから獲る意義を説明
写真: 沖縄県の科学者はマクブを大きくしてから獲る意義を魚価で説明。沖縄県水産海洋技術センター提供

 同県は沿岸の魚約200種の体長組成、100種弱の資源量指標値(漁獲努力当たり漁獲量)を分析。政府の今年度の分析対象が67種であることと比べても目立つ数字だ。 

漁業者含め協議

 三重外湾漁協和具海老網同盟会は、科学者の助言に従ってイセエビの漁獲サイズを制限して資源を大きくした。この背景について同会は「県の研究者として赴任した山川卓先生(現東京大准教授)が優しく、知識豊富だった。潜水調査の結果を基に、一緒に話し合った。漁業者の知らないことも詳しく教えてくれた」と説明する。 

EDF(環境保護基金)提供。本記事は、みなと新聞の許可を得て転載しています。

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