水産業のデータイノベーション 漁業法改正で日本にチャンス

日本食の根幹をなす水産業が、漁業法改正で大きく変わろうとしている。水産庁と水産研究開発機構、国際環境団体が協働した、データイノベーションとは何か。日米の漁業ビジネスを支援する国際環境団体にその可能性を聞いた。

データイノベーションで
グローバルなニーズに対応

シェムズ・ジュド(EDF 太平洋地域ディレクター)

米国ニューヨークに本部を置く国際環境団体、エンバイロンメンタル・ディフェンス・ファンド(EDF)で太平洋地域のディレクターを務めるシェムズ・ジュド氏は、水産業の直面するグローバルな課題を3つに整理する。第一に「食料の安全保障」が低下し、全体として収益性が不安定化するほか、発展途上国でも栄養分供給の不足が懸念される。第二に乱獲によって、全般的な魚のとり過ぎが生じ、生態系で稀少な種の保全に失敗している。第三に、第一の課題とも重なるが、グローバルな気候変動に対する適切なマネジメントが講じられていない。これらの課題は、2015年9月に国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)の観点からも、「つくる責任 つかう責任(SDG12)」や「海の豊かさを守ろう(SDG14)」に直結する。

水産業の安定化は、国内政策的にも喫緊の課題と捉えられている。日本では2018年12月の漁業法改正により、漁業許可制度が随時新規・更新許可を行うよう見直され、産業の競争力が図られた。また、科学的根拠に基づいた資源管理が提唱され、ステークホルダーの共通理解を促し、水産資源のサステナビリティを高める狙いがある。

「漁師は本来イノベーティブで、先端的なテクノロジーの採用には意欲的です」(ジュド氏)。改正漁業法では、科学に基づいたTAC(漁獲可能量)を設け、割当量を超える漁獲を禁止することで量的管理を行う。例えばアメリカ西海岸で枯渇が懸念されている水底魚のように、保全すべき種と、充分に漁獲し収入源としてもらう種を区別し、適正な情報を与えることで、意図せざる混獲を防ぐ。

具体的には、漁船にセンシングデバイスを搭載し(写真)、ネットワーク型通信網で船舶同士を結んで、人間の目視とビデオカメラによる間接確認の両面から、漁業が許可された海域からの漁獲を義務付ける。「無駄な航路を省いた、費用対効果のよい水産ビジネスを追求できますし、漁業従事者のアカウンタビリティ(説明責任)の負担を軽減することにつながります」とジュド氏は語る。これにより科学に基づいた適切な漁獲量を守り、漁業情報に対する漁師のモチベーションを高く維持し、またイノベーションに対する意識を持つことにつながる。

データ収集のため船舶に取り付けられたセンシングデバイス
© Leslie Von Pless/Environmental Defense Fund

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